dentsu Japanで活躍する従業員の
ベストプラクティス&インタビュー

マネジメントとして当事者を
サポートすること

菅本 英克(電通)

「ごくふつうの電通人」

「特別意識が高かったわけではない、ごくふつうの人」-電通 第3マーケティング局(2024年当時) の菅本 英克は自身のことをそう形容する。しかしある日、菅本は部下の大島から性自認についてのカミングアウトを受ける。「ごくふつうの電通人」菅本は、そのときどう動いたのか。何を学んだのか。当時のことを語ってもらった。

予想外のカミングアウト

「最初は、『1on1の時間を少し長めに取って欲しい』と言われたんです。そのときは、転職の報告だと思いましたね。まさか性別変更の相談だとは思いませんでした。」
カミングアウトを全く予想していなかった菅本。正直驚いたというが、同時にある感覚も生まれていた。それは「自分が一番のサポーターに指名された」という感覚だった。
「彼女から、性別変更というのは電通では未だかつて例のないことだと教えてもらいました。そんな大変な挑戦に挑む人に、応援団として指名された。そう思うととても光栄に感じました。これを意気に感じないマネジメントはいないと思います。」
菅本がまず伝えたのは、自分は全力で応援するし、勉強するつもりでもあること、しかしもし至らないところや間違ったところがあれば指摘してほしいということだった。

一番のサポーターとして

これに対し、大島から伝えられた希望は2つ。1つは、今の仕事をやり続けること。そしてもう1つが、本当の自分に合った名前に変更したいということ。ここから菅本のサポーターとしての奮闘がはじまった。
まずは、仕事の継続。菅本は大島と相談し、部から局、社内、クライアントへと「同心円上」に伝えていくことを意識した。意図しないタイミングで情報が広がることを防ぐためだ。この方式が功を奏し、情報が漏れることはなかった。それどころか、伝えられた人はみな大島への応援の言葉を口にしたという。
「『多様性が生まれ、このチームがもっと強くなりますね』と言ってくれたクライアントさんもいました。こんな素敵な言葉を言っていただけるとは、さすがに予想していませんでした。」
しかし、名前の変更のほうには思わぬ壁が存在した。会社に登録する名前は、社内のさまざまなシステムに紐づいている。こうしたシステムは、結婚による姓の改名まで想定していても、今回のような下の名前の変更は対応していなかったのだ。
「この問題には、当時の人事局、情報システムに関わるグループ会社、経営陣など、本当に多くの方が尽力してくれました。私もそうでしたが、『前例がない』というと燃えてしまうのが電通人かもしれません。困っている人をお助けする-課題解決が仕事ですから。」
今では性別変更に伴う改名のフローは整備され、変更も容易だという。大島の挑戦は、多くの仲間を巻き込み、後に続く者のための道を切り拓いたのだ。

「自分らしくいられること」は、人権の一部

最近では、2人は発信の場に立ち、このチャレンジの過程やそのなかで得たものについて語っている。「『自分らしくいられる』って、ごくふつうの当たり前の権利じゃないですか。それに向けて努力するのは当然のこと」と菅本は微笑んだ。
菅本のうちにあるのは「DEIは特別な人だけのものではなく、ふつうの人が当たり前に取り組むもの」という信念であるように思われる。当たり前に、当たり前のことをやりとげる。菅本のその真摯な姿は、多くの人々に影響を与えている。

全員活躍の取り組み
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